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2019年11月18日
『少年寅次郎』脚本家インタビュー
岡田惠和が「少年寅次郎」で
描いた家族のかたちは
「結構スパイシーでした」
《11/15(金) 12:00配信 ザテレビジョン》

「少年寅次郎」の最終回 11月16日(土)放送
国民的映画「男はつらいよ」シリーズで監督を務めた山田洋次が主人公・寅次郎の少年期を描いた「悪童 小説寅次郎の告白」をドラマ化した井上真央主演の「少年寅次郎」(毎週土曜夜9:00-9:50、NHK総合)。
寅次郎の出生の秘密から戦争を挟んだ“悪ガキ”時代、そして妹・さくらに見送られて葛飾柴又から旅立つ13歳までを描く。
そんな同作の脚本を担当するのは、連続テレビ小説「おひさま」(2011年、NHK総合ほか)、同じく“朝ドラ”の「ひよっこ」(2017年、NHK総合ほか)などを手掛けた岡田惠和。
岡田に今回描きたかった家族像や「男はつらいよ」シリーズに対する思い、山田洋次監督とのエピソードを聞いた。
■ 「立候補した感じですね」
――「少年寅次郎」を書くことになったきっかけを教えてください。
オファーが来たというより、立候補したという感じですかね。
「男はつらいよ」シリーズのDVDマガジンに山田さんの書かれた小説が連載されていたのですが、それを読んでいたんです。
ある種のネタ集のような、エピソード0のような形で、大人の寅次郎が少年時代を回想するというような内容でした。
そしてドラマの企画を考えていた中で「これはどうですか?」と提案しましたね。
■ 「本当に手本になるシーンですね」
――岡田さんはもともと「男はつらいよ」シリーズがお好きだったのでしょうか?
“寅さんマニア”というわけではありませんが、これを機会に全部入手してみようと思ってDVDマガジンを購入しました。
そしてぶっちゃけると、これはおそらく山田さんご自身がやりたいんだろうなという空気がプンプンしていたんですよ(笑)。
ただ、少年時代の回想で、(映画シリーズなどで寅次郎を演じていた)渥美清さんがいない中、語りだけで聞かせることは映像ではできないからどうするのかなと思っていたんです。でも何年経っても映像化の話を聞かないので、提案してみようかなという感じでした。
朝ドラ(連続テレビ小説)を何度か担当していますが、時代背景などが朝ドラにぴったりだとしても半年間かけて描くには難しい企画ってたくさんあると思うんですよね。
そういう意味ではこの作品はぎゅっと凝縮してやれたらいいなと思い、それを山田さんにも快諾いただいてこういった形になりました。
――岡田さんが「男はつらいよ」シリーズの中でお好きな作品は何ですか?
「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」(1976年公開)が何度見ても好きですね。宇野重吉さんや若かりし頃の寺尾聰さんが出ていて、シナリオ的にもパーフェクトで…。
僕は本当に寅次郎さんが誰かと結ばれるのであれば、この作品の太地喜和子さん演じるマドンナと結ばれてほしいなというくらい好きです。
マドンナが毎回違うのを楽しむというのも「男はつらいよ」シリーズの醍醐味だと思うのですが、みんなそれぞれすてきで…。
寅次郎にお似合いな太地さんや4回マドンナを演じた浅丘ルリ子さんも居れば、若尾文子さんのマドンナみたいに寅次郎にまったく気持ちが動いていないヒロインが居たり…。それはそれで罪作りな感じでめっちゃ面白いですよね(笑)。
また、脚本家の中でよく話題になるのは、「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」(1975年公開)の「メロン騒動」。
頂き物のメロンをみんなで食べようと分けている時に寅次郎の分を忘れていて、食べているところに寅次郎が帰ってきてしまうというそれだけのシーンなんですが、本当に素晴らしいなと。コメディーの定番のような感じで、本当に手本になるシーンですね。
■ 「“母と息子の物語”として描けば
知らない人も興味を持ってもらえると思いました」
――脚本を書く際に心掛けたことはありますか?
“寅さん”って実在ではないけれど、みんながなんとなく知っている人ですよね。そういう人の少年時代を僕が考えていいのかなというのはありました。
また、テレビドラマなので「男はつらいよ」シリーズを知っている人が見ても、あまり知らない世代の人が見ても面白くないといけないということが大事なのかなと思いました。
――「男はつらいよ」シリーズを知らない方にも楽しんでいただくために、具体的にどのようなことに気を付けて執筆したのでしょうか?
基本的には物語の強さを信じるしかないのですが、「この子があの人になるんだ」ということを楽しむだけではなく、一人の男の子の誕生から家出するまでを当時の家族の物語として、特に“母と息子の物語”として描けば知らない人も興味を持ってもらえると思いました。
そして全く知らない人が最終回で家を出ていった寅ちゃんを見て、「男はつらいよ」を見てみたいと思ってくれたら幸せです。
――反対に「男はつらいよ」シリーズを知っている人が楽しめる部分を教えてください。
基本的には「男はつらいよ」シリーズとつながるように作っていますし、映画シリーズが好きだった方がクスっとなるようなことも散りばめられていると思います。ただそれが内輪受けっぽくならないように、知らない人が見ても楽しめるようにしたいなと。
逆に映画シリーズには真央ちゃん演じる光子や毎熊(克哉)さん演じる平造は登場しないので、「そうだったんだ」と思ってもらえるとうれしいです。
――岡田さんが感じる「男はつらいよ」シリーズの魅力を教えてください。
お芝居ですね。起こることはそんなに大きなことではないですし、言ってしまえばおなじみのことをやっているわけですが、そこを楽しんでいるという感じがありますよね。
だから今回も(寅次郎の家である団子店の)くるまやでの役者たちの芝居を書きたいなと思ったし、そこでの人間模様が見ている人の心を打つのではないかなと。大人なのにけんかしちゃったり、適度にみんなダメな部分があって含めて楽しいですよね。
1話を見てそれは表現できたのではないかと思いますし、やはり真央ちゃんは素晴らしいと思いました。
■ 「書いていて結構スパイシーでした」
――出演者の皆さんの演技はいかがでしたか?
真央ちゃんはすごく役に気持ちが入っているというか、彼女の頭から指の先まで車光子に、母親に見えますよね。
それと寅次郎! オーディションで見つけたそうですが、「令和にこんな子がいるのか」となりました。
実は最初に一番心配したのは寅次郎なんです。渥美さんのイメージがある中で、かわいいイケメンみたいな男の子だとちょっとね…(笑)。だからといって探すのって難しいじゃないですか。スタッフさんがそのまま寅次郎になる感じの寅ちゃんを見つけてくれてよかったです。
脚本を書く段階ではキャストがほぼ決まっていたので、基本的には当て書きしました。
平造に関しては、自分と他の女性との間にできた子供が家にいて、その子をかわいいと思っていないわけではないけどかわいがることができない感じとか、父と子の分かりあえなさというのは実の父と子にもあることですよね。
だからそこをあまり甘く書くことはしなかたのですが、その分光子と平造の夫婦の芝居は高度だったのではと思います。
――岡田さんはこれまでにもさまざまな“家族の形”を描いていらっしゃいますが、今回描かれている“家族の形”はいかがですか?
お父さんが芸者さんに子供を生ませて、その芸者さんが捨てた子を光子さんが育てるという、寅ちゃんの誕生自体に毒があるし、決して能天気な家族の話ではないですよね。そんな経緯がある上で一緒に暮らしていて、さらに寅次郎を言葉で疎む父親というのは書いていて結構スパイシーでした。
さらにその中にある母と息子の絆というのも自分の中でも書いたことのない感じだったので面白かったですね。
また、これは原作にもあることですが、寅次郎には腹違いのお兄さんが居たり、さくらも腹違いの妹で…。この父親とお母さんのもとに生きてきたから寅次郎はああなるんだなという感じには仕上がっていると思います。
――原作の山田洋次監督とお話しされたことはありますか?
ごあいさつに行って、一晩一緒に過ごしました(笑)。
山田さんは小説家ではなく監督なので、おそらく書いている時に「きっと自分はこうやって撮る」と考えていたと思うんです。だからそれを全て引き受けてしまうのはちょっと責任重大すぎるなと思い、適度に聞いて、適度に忘れてという感じでした(笑)。
こちらとしては執筆前に軽い感じでお会いするのかと思っていたら「岡田くんの中のファーストシーンは何?」って言われて…。まだ考えてない…と思ったのですが(笑)。当然ですけど各登場人物に思い入れもありますし、やっぱり本当は自分で撮りたいんじゃないんですか(笑)?
世代的に僕の知らない当時の少年の遊びやご自身のことをいろいろと教えていただいて、とても参考になりました。
台本を書き始めてからはお会いしていません。リスペクトが強いので、お会いしちゃうと「分かりました!」と言っちゃいそうで…。
自分が苦しくなってしまうので、脚本家として“素材”として扱おうと思い、最初に教えていただいたこと以外に内容についてご相談とかはしていないです。
(ザテレビジョン)
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Posted by ドラドラしゃっちー at 07:07│Comments(0)
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